諏訪大社上社本宮

「いつか自分のお店を持ちたい」「独立して仕事をしたい」——そんな思いを持ちながら、開業の準備を進めている方は少なくないと思います。

開業にあたって、事業の内容によっては行政からの「許可」や「届出」が必要になることがあります。知らずに営業を始めてしまうと、後から対応に追われたり、最悪の場合は無許可営業になってしまうこともあります。そして許可は、取得して終わりではなく、その後の更新や手続きまで含めて付き合っていくものです。

今回は、諏訪・茅野エリアで開業を考えている方に向けて、特に関わりの多い6つの業種を取り上げ、必要な許可・届出と、取得した後の「維持」のポイントをまとめました。すでに事業をされている方にとっても、ご自身の手続きを見直すきっかけになればと思います。

① 建設業

大工、電気工事、土木工事など、建設に関わる仕事を請け負う場合、1件の工事金額が税込500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)になるときは、建設業の許可が必要です。「自分は小さな仕事しかしない」と思っていても、元請けから大きな工事を任されることもありますので、早めに確認しておくとよいでしょう。

取得後の維持について:建設業許可は5年ごとに更新が必要です。また、毎事業年度終了後4か月以内に「決算変更届」を提出する義務があります。この届出を続けていないと更新ができなくなることがありますので、毎年の決まった手続きとして認識しておくことが大切です。

② 飲食店・食品販売

飲食店を開業する場合は、保健所への「食品営業許可」の申請が必要です。令和3年6月の食品衛生法改正により、許可業種が34業種から32業種に再編され、業種によって「許可」が必要なものと「届出」で足りるものに整理されました。お菓子の製造販売、キッチンカー、農産物の加工販売なども対象になる場合があります。あわせて、原則としてすべての営業者にHACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置が求められるようになりました。

取得後の維持について:食品営業許可には有効期間があり、期限前に更新手続きが必要です。この期間は業種で一律に決まるのではなく、施設の構造や設備の耐久性などをもとに保健所が査定して定めます。国は優良な施設には長めの期間を設定するよう求めており、自治体によっては5〜8年の幅で運用している例もあります。長野県(諏訪地域)では5年での運用が多いようです。有効期間は許可証に記載されますので、ご自身の許可証で確認しておくとよいでしょう。

③ 農地の転用・売買

農地に倉庫や住宅を建てたい、農地を別の用途に使いたいという場合は、農地転用の手続きが必要になることがあります。諏訪・茅野エリアには農地が多く、開業の際に農地転用が絡むケースは珍しくありません。

農地転用は、農地の場所や種類、転用の目的・規模によって手続きが変わります。許可が必要なケースもあれば、届出で済むケースや、そもそも許可がいらないケースもあり、一律には言えない部分が多い分野です。地域の都市計画の状況によっても前提が変わってきます。判断が分かれやすいところなので、思い込みで進めず、計画の早い段階で農業委員会や専門家に確認しておくと安心です。

取得後の維持について:転用の許可を受けた後は、許可の内容どおりに土地を使用することが求められます。許可の目的と異なる使い方をすると農地法違反になる場合があり、転用後の利用状況について農業委員会から確認が入ることもあります。

④ 旅館・民泊

観光地を多く抱える諏訪エリアでは、宿泊業を始めたいという相談も少なくありません。旅館やホテルを営業するには旅館業法に基づく許可が、住宅の空き部屋を旅行者に提供する「民泊」には住宅宿泊事業法に基づく届出が必要です。それぞれ施設の構造基準や衛生管理の要件があります。なお民泊には、年間の営業日数が180日以内という上限がある点にも注意が必要です。

取得後の維持について:旅館業の許可自体に有効期限はありませんが、事業を譲ったり相続が発生したりして営業者が変わるときは、事前の「承継の承認申請」が必要です。特に相続の場合は、亡くなってから60日以内に申請しなければならず、これを過ぎると許可を引き継げず新規に取り直すことになります。民泊(住宅宿泊事業)の場合は、2か月ごと(偶数月の15日まで、前2か月分)の定期報告が義務づけられており、宿泊実績がない場合も報告が必要です。

⑤ 産業廃棄物収集運搬

建設業や解体業を営む方が兼業で取得するケースが多い許可です。工事現場から出た廃材などを運搬するには、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要で、運搬にかかわる都道府県・政令市ごとに許可を受ける必要があります。長野県内だけでなく、県をまたいで仕事をする場合は複数の許可が必要になります。

取得後の維持について:許可の有効期限は5年で、更新が必要です。更新の申請には、あらためて講習会を受講し修了証を添えることが求められます(修了証には有効期限があります)。取り扱う廃棄物の種類を追加する場合は、変更許可の申請が必要になります。

⑥ 古物商

中古品の売買やリサイクル販売を行う場合は、古物商許可が必要です。フリマアプリやネットショップで中古品を継続的に販売するケースも対象になることがあります。移住してこられた方が副業として始めることも多く、「許可が必要とは知らなかった」というケースも見受けられます。申請は営業所を管轄する警察署で行います。

取得後の維持について:古物商許可に有効期限はありませんが、営業所の住所や代表者などが変わった場合は変更届が必要です。取り扱う古物の種類を追加する場合も手続きが生じます。また、取引を記録する帳簿の備付け・保存義務があるため、日常的な記録管理が求められます。

まとめ

こうして並べてみると、許可や届出は「開業前に一度取れば終わり」ではなく、更新・報告・承継といった形で、事業を続ける限り付き合っていくものだとわかります。特に農地転用のように、土地の場所や条件によって手続きが変わるものもあり、地域ごとの前提を踏まえた確認が欠かせません。

これから始める方は開業前の確認を、すでに事業をされている方は更新や届出の状況の見直しを、それぞれ一度立ち止まって整理してみてはいかがでしょうか。「自分の場合はどうなるのか」「何から手をつければいいか」といった疑問がありましたら、お気軽にご相談ください。

参考

【根拠条文】
・建設業法第3条第1項(建設業の許可)
・建設業法施行令第1条の2(軽微な建設工事の範囲)
・食品衛生法第55条(営業許可)、同法第52条(有効期間)
・農地法第4条・第5条(農地の転用・転用目的の権利移動)
・旅館業法第3条(営業の許可)、同法第3条の3(相続による承継)、同法第3条の2(事業譲渡・合併・分割による承継)
・住宅宿泊事業法第3条(届出)、同法第14条(定期報告)
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条(産業廃棄物収集運搬業の許可)
・古物営業法第3条(許可)、同法第16条(帳簿等の備付け)

【参考リンク】
e-Gov法令検索「建設業法」
国土交通省「建設業の許可について」
厚生労働省「食品衛生法関連情報」
農林水産省「農地転用許可制度」
茅野市「茅野市の都市計画のご案内」
国土交通省「民泊制度ポータルサイト」
e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
・警視庁「古物営業法の解説」

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