「補助金なんて、うちには関係ない」

正直なことを言うと、私自身もかつてそう思っていました。飲食店を始めた頃、国の制度を使うという発想がそもそもありませんでした。自分でやる、自分で稼ぐ。そういう気分が、どこかにあったのだと思います。

ただ、経営を長く続けていると、少し考え方が変わってきます。補助金は「もらい得」ではなく、事業への投資を国が一部負担してくれる制度です。使える制度を使わないのは、ただの機会損失かもしれない。そう気づいたのは、行政書士になってからのことです。

今回は、諏訪・茅野地域の小規模事業者の方に向けて、「小規模事業者持続化補助金」の基本をお伝えします。

持続化補助金って、何のための補助金?

正式名称は「小規模事業者持続化補助金」。中小企業庁が所管し、全国商工会連合会・日本商工会議所が事務局を担う国の補助金制度です。

一言でいうと、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む費用の一部を、国が補助してくれる制度です。チラシをつくりたい、ホームページを整備したい、新しい設備を入れたい——そういった「次の一手」を後押しするためのお金です。

2014年にスタートし、回を重ねながら今も続いています。それだけ多くの事業者に使われてきた制度ということでもあります。

誰が対象?「小規模事業者」の定義

「小規模事業者」とは、業種によって従業員数で判断します。

  • 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常時使用する従業員が5人以下
  • 製造業・その他の業種(宿泊業・娯楽業含む):常時使用する従業員が20人以下

諏訪・茅野地域でいえば、精密部品の小さな工場、農産物の加工販売をしている事業者、民宿やペンション、地域の飲食店——多くの事業者が対象になります。個人事業主も対象です。

ただし、医師・歯科医師・助産師、および医療法人・社会福祉法人・学校法人・宗教法人などは対象外となっています。行政書士・税理士・社会保険労務士などの士業は、個人事業主であれば申請できます。また、大企業が実質的に支配するいわゆる「みなし大企業」も対象外です。

いくらもらえる?補助額と補助率

通常枠(一般型)の基本は以下の通りです。

  • 補助上限:50万円
  • 補助率:2/3(かかった費用の3分の2を補助)

つまり、75万円の取り組みをすれば、そのうち50万円が補助される計算です。

さらに、条件を満たすと補助上限が上がります。

  • インボイス特例(免税事業者から課税事業者に転換した事業者):+50万円
  • 賃金引上げ特例(事業場内最低賃金を50円以上引き上げる事業者):+150万円
  • 両方を満たす場合:最大250万円まで

特例はあくまで要件を満たした場合の話ですので、まずは通常枠50万円を基本に考えると分かりやすいと思います。

何に使える?補助対象経費の具体例

販路開拓や業務効率化に関わる経費が対象です。主なものを挙げます。

  • 広報費:チラシ・パンフレット・ポスターの作成、広告掲載料
  • ウェブサイト関連費:ホームページ制作・更新(補助金総額の1/4が上限)
  • 展示会等出展費:見本市・物産展への出展費用
  • 機械装置等費:補助事業に必要な設備・器具の購入
  • 開発費:新商品・新サービスの試作・開発費用
  • 借料:展示スペース・機器のレンタル費用
  • 委託・外注費:専門家への相談・コンサルティング費用など

注意点として、人件費や不動産購入費、汎用性の高い備品(業務以外にも使えるPC等)は対象外です。また、補助金は後払いです。先に自己資金で支払い、後から補助金が入ってくる仕組みです。

申請の流れ——商工会・商工会議所が窓口になる

持続化補助金の大きな特徴は、地元の商工会・商工会議所が申請をサポートしてくれる点です。

おおまかな流れはこうです。

  1. 地域の商工会・商工会議所に相談する
  2. 経営計画書・補助事業計画書を作成する
  3. 商工会・商工会議所から「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらう
  4. 電子申請システムで申請する
  5. 審査・採択の通知を受ける
  6. 交付決定後に事業を実施し、実績報告をして補助金を受け取る

一点、見落としがちな注意点があります。「様式4」の発行受付締切は、申請締切より2週間ほど早いことが多いです。「締切に間に合わなかった」という声をよく聞きます。公募が始まったらすぐ動く、というのが鉄則です。

茅野市は商工会議所地区です。諏訪市・下諏訪町・岡谷市なども各地の商工会議所・商工会にお問い合わせください。

給付金と補助金——似ているようで、全然違う

コロナ禍の給付金をきっかけに、補助金への問い合わせが増えました。あの経験で「国からお金がもらえる」という認識が広がったのは良いことだと思います。ただ、給付金と補助金は仕組みがかなり違います。

給付金は、条件を満たせば原則として受け取れるお金でした。補助金はそうではありません。審査があり、採択されるかどうかは分かりません。 第17回公募では2万3千件以上の申請に対して採択は約1万2千件、採択率は約51%でした。

つまり、2人に1人は採択されないということです。申請書を出せばもらえる、という制度ではありません。

採択の鍵は、経営計画書の中身です。「自社の強みは何か」「どんな顧客に、どんな価値を届けたいか」「この取り組みで売上がどう変わるか」——そうした問いに、具体的に答えられているかどうかが問われます。

それでも活用する理由——投資効率という考え方

「国から金なんか貰えるか」という感覚、私には分かります。自分の商売は自分で切り盛りする。その矜持は大切にしたいと思います。

ただ、経営を続けていくうちに気づいたことがあります。補助金を使うことは、依存することではなく、投資効率を上げることだということです。

100万円の設備投資をしようとしたとき、自己資金だけなら100万円出ていきます。補助金を使えば、同じ設備を33万円の自己負担で手に入れられる。残りの67万円は次の手に使えます。経営判断として、合理的な選択肢だと思うのです。

補助金は「計画を立てて申請する」という手間がかかります。でもその手間が、経営を見直すいい機会になることも少なくありません。経営計画書を書く過程で、自社の強みや課題が整理されていく——そういう声を、サポートを通じて何度も聞いてきました。

まとめ・ご相談はお気軽に

小規模事業者持続化補助金は、諏訪・茅野地域のような地方の小規模事業者にこそ活用してほしい制度です。大がかりな事業計画でなくても、「チラシをつくって新規客を増やしたい」「ホームページを整備して問い合わせを増やしたい」といった身近な取り組みが対象になります。

次回の公募スケジュールは現在調整中ですが、準備は今から始めておくことをお勧めします。特に経営計画書は、一朝一夕には書けません。公募が始まってから慌てないためにも、早めに動いておくのが得策です。

「自分の事業が対象になるか確認したい」「どう書けばいいか分からない」——そんな入口のご相談から、お気軽にどうぞ。

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参考

【参考リンク】
中小企業庁「補助金の公募・採択」
小規模事業者持続化補助金事務局(商工会地区)
小規模事業者持続化補助金事務局(商工会議所地区)

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(事務所情報)
行政書士 しらかば綜合事務所 代表行政書士 高田賢一 
 (行政書士登録番号 第18150062号 認定経営革新等支援機関ID 107520000214) 
長野県行政書士会諏訪支部理事・支部IT部会長(任期~R9.5まで)
長野県茅野市北山3412-80

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