
相続手続きにおいて、不動産や預貯金と同様に適切な処理が求められるのが「自動車」です。
日常的に使用している車両であっても、所有者が亡くなられた時点でそれは「相続財産」となります。そのため、遺産分割協議や相続税申告においては、適正な評価額の算定が必要不可欠です。
また、自動車の相続手続き(名義変更等)に関しては、近年のコンプライアンス重視の傾向や行政書士法の観点から、依頼先について慎重な判断が求められるようになっています。
今回は、実務上の「中古自動車の評価方法」と、自動車販売店様や整備工場様にご迷惑をかけないための「適切な依頼のあり方」について解説します。
Check この記事のポイント
- ✅ 中古車の相続評価額は、原則として「時価(査定額)」が基準になる
- ✅ コンプライアンス重視の時代、手続きの「丸投げ」はリスクになる
- ✅ 「整備は販売店、書類は行政書士」の分業が安心の近道
相続財産としての「中古自動車」の評価方法
相続税申告や遺産分割協議を行う際、自動車の価値をどのように算定すべきか、悩まれるケースは少なくありません。
実務上、中古自動車の価額は、原則として「被相続人が亡くなった日(課税時期)」における時価を基に判断することが一般的です。具体的には、主に以下の考え方が用いられています。
1. 中古車市場の価格を参考にする方法(売買実例価額)
自動車は市場での流通性が高く、車種・年式・走行距離・状態に応じた相場が形成されています。そのため、最も合理的な評価手法の一つとして、中古車市場での取引価格(売買実例価額)を基準とする方法が挙げられます。
具体的には、インターネット等で同等の車種・年式の販売価格を確認することも参考にはなりますが、相続財産評価としての精緻さを求める場合は、中古車買取業者等の査定額をベースに検討することが望ましいとされています。
これは、販売価格には業者の利益や整備費用が含まれているのに対し、査定額(買取価格)の方が、より財産そのものの価値に近いと考えられるためです。
2. 財産評価基本通達に基づくアプローチ
税務上の評価においては、国税庁の「財産評価基本通達」に準拠することが基本とされています。
同通達では、一般動産の評価について、原則として「売買実例価額」または「精通者意見価格(専門家の鑑定額等)」によるとされています。
市場で類似の車両が見当たらない特殊なケースを除き、基本的には市場での取引価格(査定額等)を客観的な指標として採用することが、実務上多く行われています。
3. 評価通達に従うことの重要性
「年式が古いから価値はないだろう」と主観的に判断し、評価額をゼロとすることは慎重であるべきです。
過去の判例等の傾向を見ても、評価通達に定められた方法以外で評価を行うには、適正な時価を算定できないような「特別な事情」が必要であると考えられています。
客観的な査定等の根拠資料がない状態で、市場相場とかけ離れた評価を行うことは、後の税務調査等で指摘を受ける可能性も否定できません。適正な申告を行うためにも、専門業者の査定書等の資料を整えておくことが推奨されます。
相続手続きの依頼先に関する留意点
評価額が確定した後、実際の遺産分割協議書の作成や名義変更(移転登録)の手続きへ進むことになりますが、この段階での依頼先については、法令遵守の観点から注意が必要です。
「いつも車検をお願いしている自動車販売店様や整備工場様に、相続手続きもまとめてお願いしたい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年の法改正やコンプライアンスの観点から、全てをお任せすることは難しい場合があることをご理解いただく必要があります。
行政書士法等の観点から見るリスク
自動車の登録申請に関する書類作成や提出代行を、報酬を得て業として行うことは、原則として行政書士の業務範囲とされています。
特に「相続」を原因とする移転登録においては、戸籍謄本の収集・読み取りや、権利関係を確定させるための「遺産分割協議書」の作成が不可欠となります。こうした権利義務に関する書類の作成代理は、自動車販売等の付随業務の範囲を超え、行政書士法に抵触する可能性があるとの見方が強まっています。
専門家への分業が安心への近道
以前はサービスの一環として行われていた慣習的な代行であっても、現在はコンプライアンス意識の高まりにより、無資格者による書類作成業務への視線は厳格化しています。
もし、お客様が「面倒だから」と強く依頼された場合、懇意にされている販売店様が、意図せず法令違反のリスクを負ってしまう可能性も考えられます。
大切なお車の主治医である販売店様に、過度な負担や法的なリスクを負わせないためにも、「車両の整備・売却は販売店様」「法的な書類作成・申請手続きは行政書士」と、役割を分担することが、双方にとって安心な選択と言えるでしょう。
【自動車販売店様・整備工場様へ】
お客様から「相続による名義変更」を頼まれたら
日頃よりお客様のカーライフを支えている自動車販売店様や整備工場様であれば、長年のお付き合いがあるお客様が亡くなられ、ご遺族から「父の車を相続することになったので、名義変更をお願いしたい」とご相談を受ける機会もあるかと存じます。
「長年のよしみだから、なんとかしてあげたい」というお気持ちは痛いほど分かりますが、相続に伴う手続きに関しては、通常の売買や下取りとは異なる慎重な対応が求められます。
通常の名義変更との大きな違い
相続による名義変更(移転登録)は、単に車検証の所有者欄を書き換えるだけの手続きではありません。申請の前提として、以下の法的な確認作業が必須となります。
- 相続人の確定(出生から死亡までの連続した戸籍謄本の収集・解読)
- 遺産分割協議の成立(誰がその車を相続するかの合意)
- 遺産分割協議書の作成(実印の押印と印鑑証明書の添付)
これらの業務、特に「遺産分割協議書」の作成代理や、戸籍から相続関係説明図を作成する業務などは、行政書士などの専門資格者が行うべき領域とされており、販売店様がサービスの一環として代行することは、行政書士法との関係において慎重な判断を要します。
「餅は餅屋」の連携で、貴社のリスク回避と負担軽減を
もし、お客様から相続手続きのご依頼があった際は、無理にご自身で対応されようとせず、「相続の手続きは複雑で専門的な書類が必要になるため、専門の行政書士を紹介します」とご案内いただくことをお勧めいたします。
行政書士と連携することで、販売店様には以下のメリットがございます。
🛡️ コンプライアンス・リスクの回避
無資格での書類作成(非行政書士行為)の懸念を払拭し、法令遵守に基づいた健全な経営体制をアピールできます。
📉 業務負担の軽減
戸籍の収集やお客様への書類案内といった、煩雑で時間のかかる事務作業から解放され、本業である販売・整備業務に専念いただけます。
😊 お客様の安心感
法的な裏付けのある適正な手続きを行うことで、後々の親族間トラブルを防ぎ、お客様からの信頼を守ることにつながります。
当事務所では、販売店様からのご紹介案件も承っております。
「手続き(書類作成・申請)は当事務所」が担当し、名義変更完了後の「車両の整備・売却・納車」は販売店様にお戻しするという連携フローで、スムーズな引き継ぎをサポートいたします。
まとめ
中古自動車の相続は、単なる名義変更手続きに留まらず、適切な財産評価と、法令に則った書類作成が必要となる手続きです。
特に近年は、各業界においてコンプライアンスの遵守が強く求められており、専門家ごとの役割分担を明確にすることがスタンダードとなりつつあります。
自動車の相続手続き・連携のご相談はお気軽にどうぞ
当事務所では、自動車の相続手続きに関するご相談を承っております。
個人のお客様はもちろん、顧客対応にお悩みの自動車販売店様・整備工場様からのご相談も歓迎しております。
法令を遵守した形でのスムーズな連携をご提案させていただきます。

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行政書士 しらかば綜合事務所 代表行政書士 高田賢一
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長野県行政書士会諏訪支部理事・支部IT部会長(任期~R9.5まで)
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