先日、行政書士会から「改正建設業法の完全施行について」という通知が来ました。資料をすべて合わせると軽く200ページを超え、目を通すだけでも大変です。お客様からは「法律の話は難しくて」とよく言われますが、今回の主な改正点についてなるべくわかり易くお伝えしたいと思います。対応がまだの事業者様のお役に立てればと思います。
 建設業の事業者は今度改正される下請法(取適法へ)ではなく、建設業法の規定に従うことになります。

改正の趣旨

 良い建物や道路を作るには、良い職人さんが欠かせません。 今回の改正はシンプルです。 「職人さんの給料(労務費)を、ちゃんと守ろう」 というお話だからです。
 これまでの「コミコミ単価」や「予算ありきの値引き」。 正直にいうと、長年の習慣を変えるのは大変だなぁ、とは思います。 でも、現場を支えてくれている職人さんたちには関係ありません。安く叩かれてしまうのだったら、違う現場に行ってしまうでしょう。
 建設業界の労務費をしっかり守るのが大事、 それが新しいルールの一番の趣旨です。そのために守らなければならないことが明文化されました。


労務費が聖域に

 建設業界では資材価格が上がったり、価格競争が激しくて、 しわ寄せが職人さんの賃金に向かいがちでした。 そうすると、若い人が入ってこない、ベテランが辞めてしまう。 これは、不幸なことではないかと思います。
  「労務費(賃金)」は聖域にして、競争で削ってはいけないものになりました。ですので、労務費は見積の中に適正に計上しなければならなくなりました。(民間工事は努力義務。公共工事、又は注文者から求められた場合は義務です)
 また、著しく低い見積りや契約は「法律違反」になります。
 公共工事だけでなく、民間の工事も、下請けの契約もすべてです。 職人さんが安心して働ける環境を作る。 当たり前のことですが、とても大切なことです。


そのために見積書が変わります

 今までは「工事一式」とか「材工共(ざいこうとも)」で良かったかもしれません。 でも、これからは少し手間をかけてあげる必要があります。
①分けて書くこと
 モノの値段(材料費)と、人の値段(労務費)を分ける。 あと、法定福利費や経費もですね。

②「労務費」は別枠
 これが一番大事です。 「予算が合わないから、とりあえず労務費を削ろう」 これはもう、できません。
  基準を著しく下回る見積りを出すことも、それを強要することも禁止されます。正直、面倒だなぁ、と思われるかもしれません。 でも、良い仕事をするためには、適正な対価が必要です。 「いつものあれ(値引き)はないの?」と言われても、 「法律で決まりましたから」と胸を張って言えるようになります。


適正な労務費とは?

いくらなら適正なのか? 計算式はいたってシンプルです。

適正な労務費 = 労務単価 × 歩掛(あゆみがかり)

◎労務単価
 国の「公共工事設計労務単価」が基準です。 「うちは民間だから安くていい」というのは、もう通らないようです。

◎歩掛(手間)
  その作業に、何人の職人さんが何日かかるか。 国が標準的な基準を出しています。

  現場が狭かったり、手間がかかるなら、その分高くてもいい。 逆に、機械を使って効率よくできるなら、安くてもいい。
 根拠のない値引きはダメですが、 理由があれば大丈夫。 バランス良く仕上げるのが大事だと思います。


積上げ式の見積へ

 これからは「総額でなんとかして」ではなく、 積み上げていく交渉になります。
下請・職人の皆様へ
 「どんぶり勘定」は卒業です。 自分たちの技術にどれだけの価値があるか、 自信を持って見積書で示してください。
 「もらえないから払えない」から脱却するチャンスです。
元請・発注者の皆様へ
 出てきた見積りを尊重してください。 「一律カット」はできません。 もし高いなと思ったら、「どういう計算?」と聞いてみてください。 ちゃんとした理由があるはずです。
 お互いに納得して仕事をする。 良い関係があってこそ、良い現場ができるのだと思います。


コミットメント条項とCCUS

◎コミットメント条項
  ちょっと難しい名前ですが、ようは「約束」です。 「職人さんにちゃんと適正な賃金を払います」 と契約書で約束する。 これを守ることで、「あそこはホワイト企業だ」と信頼されるようになります。 選ばれる会社になるための、大切な一歩です。
◎CCUS(キャリアアップシステム)
 CCUSという制度で 職人さんの腕前(レベル)に見合った年収の目安も示されています。 頑張った人が報われる。 そんな当たり前の風景が、建設業界にも広がるといいなと思います。
一人ひとりを見る
 社会保険についても厳しくなります。 会社単位だけでなく、「職人さん一人ひとり」が加入しているか。
 あと、「一人親方」の問題。 本当は社員なのに、経費を浮かすために一人親方扱いにする。 これは悲しいことです。 「働き方自己診断チェックリスト」などで、実態をしっかり確認することになります。
 手間はかかります。 でも、人を大切にしないと、生き残っていけない時代です。

これからのこと


 「法律が変わったから仕方なく」 そう思うと、気が重くなりますよね。でも、 「適正な利益をとって、社員を守るチャンス」 そう捉えてみてはどうでしょう。

◎見積書の形を変えてみる
◎単価を見直してみる
◎協力会社さんと話をしてみる

 今までできなかったことが、できるようになるかもしれません。

 10年後、20年後も、この諏訪の地で 「いい仕事をするね」と言われる会社であり続けるために。 今、変わる時期なのだと思います。
 見積りや契約のこと、一人親方のこと、CCUSのこと。 悩んだら、いつでもご相談ください。 地域の建設業が元気になるよう、私も精一杯お手伝いします。

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(事務所情報)
行政書士 しらかば綜合事務所 代表行政書士 高田賢一 
 (行政書士登録番号 第18150062号 認定経営革新等支援機関ID 107520000214) 
長野県行政書士会諏訪支部理事・支部IT部会長(任期~R9.5まで)
長野県茅野市北山3412-80

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