
最近は、インターネットで検索すれば、相続に関する専門的な情報をたくさん目にすることができます。ただ、情報が多すぎて、「結局、全体として何をすれば良いのか」「いつまでに何を判断すれば良いのか」といった、全体像や時間の流れ(スケジュール感)が、かえって分かりにくくなっている、と感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらの記事では、難しい専門用語はできるだけ使わずに、まずは相続の「全体像」と「おおまかなスケジュール感」を掴んでいただくことを一番の目的にしております。
この記事を読み終えていただく頃には、「いつまでに、何をしておくと安心か」という見通しが立ち、少しでもご不安が和らげばと願っております。
1. 相続の「2つの側面」と「本当のゴール」
まず知っていただきたいのは、一般的に「相続手続き」と呼ばれているものには、大きく分けて2つの側面がある、ということです。

① 亡くなられた後の「お片付け」としてのお手続き
これは、役所への届出(死亡届、世帯主変更など)や、公共料金(電気、ガス、水道)、携帯電話、クレジットカードなどの名義変更や解約といった、いわば「後片付け」として行うお手続きです。専門家の間では死後事務、と言ったりもします。
死亡届などは葬儀会社様に代行いただくことが一般的かと思います。また、世帯主変更届も不要なケースが多いのではないかと思います。
年金や健康保険のお手続きも死後事務に含まれます。これらは期限が非常に短い(〜14日以内)ものが多く、ご葬儀と並行して進める必要があるため、ご家族様の負担が大きくなりやすい時期でもあります。
② 財産を「引き継ぐ」ためのお手続き
こちらが、皆様が「相続」と聞いてイメージされることが多い、故人が遺された財産(遺産)をご相続人の皆様に引き継ぐための、法律に基づいたお手続きです。
- 遺言書があるかどうかを確認する
- 誰に、何を引き継がせるか、遺産の承継は故人のご意志が最優先です。遺言の形式は民法で厳密に決まっています。もし、ご自宅で遺言書を見つけても不用意に開封してはいけません。
- どなたが相続人になるのかを戸籍で確定させる(相続人調査)
- 故人の出生から死亡までの戸籍を集め、それを読んで相続人を推定します。次に推定相続人の戸籍を取り、相続発生時にその人が生きていたことを確認します。そうして法定相続人(遺産分割協議の参加者)が確定します。
- どのような財産があるのかを調べる(財産調査)
- 現金、預金、有価証券、車、骨とう品、不動産など金銭的価値のあるものから借金、未払いの入院費、などすべて調べて目録を作成します。相続税が発生するかどうかの見当がつきます。
- 相続人の皆様全員で、遺産の分け方をお話し合いする(遺産分割協議)
- 誰がどの財産を取得するのが良いか、法定相続人で話し合って決めます。どう決めたらよいか見当もつかないときは法定相続分(民法で定められている分け方)を話し合いのスタートにしても良いでしょう。
- 不動産や預貯金、株式などの名義を変更する
- 協議で決まった内容を有効な書面にし、それをもとに各機関で名義変更の手続きをしていきます。
- (必要な場合)相続税の申告・納付を行う
- 2023年、相続税が課税された人の割合は9.9%です。つまり、9割の人は相続税申告をしなくても良かったということです。
それぞれの過程で細かいルールが決められています。
多くの方が混乱しやすいのは、この「①お片付け」と「②引き継ぎ」のお手続きが、明確に区別されないまま、同時並行で発生するからかもしれません。
皆様にとっての「相続のゴール」は、どこにありますか?
お手続きを始める前に、とても大切なことをお伺いしてもよろしいでしょうか。
皆様にとって、今回の「相続のゴール」は、どこにあるとお考えですか?
「不動産の名義変更が終わればゴール」
「相続税を納めたらゴール」
そうお考えになる方も多いかもしれません。もちろん、それらも大切なゴールの一部です。
しかし、私たちが考える相続の「本当のゴール」とは?

この2つだと考えています。
お手続きは、あくまでも「手段」に過ぎません。
たとえ無事にお手続きを終えても、ご家族の間にわだかまりが残ってしまっては、本当の意味で安心したとは言えないのではないか、と思うのです。
「相続」が、ご家族の絆を試す「争族」にならないよう、円満な完了を目指すこと。これを常に心の真ん中に置いて、全体の流れを考えていくことが、何よりも大切だと感じています。
2. 相続手続きの標準的な流れと期限(タイムリミット)
相続のお手続きには、法律で定められた「守らなくてはならない期限」というものがございます。この期限を知らずに過ぎてしまうと、例えば、故人様に多額の借金があった場合にそれを引き継ぐことになってしまったり、税金が高くなってしまったり、といったことにもなりかねません。
まずは全体の流れを、時系列で一緒に確認してみましょう。

【お亡くなりになられてから〜7日以内】
- 死亡届の提出
- 火葬許可証の取得
【〜14日以内】
- 世帯主変更届
- 健康保険の資格喪失届
- (なるべく早く)公共料金・インフラの名義変更、クレジットカード等の解約
【〜3ヶ月以内】 ★特に大切な期限です
- 相続放棄・限定承認の申述
もし故人様に借金が多い場合など、相続をしない(放棄する)ためのお手続きです。
この期限を過ぎてしまうと、原則として、借金もすべて相続するということになってしまいます。
(大切なこと)
この判断のために、3ヶ月以内に「どなたが相続人か(相続人調査)」と「どのような財産があるか(財産調査)」を急いで行う必要があります。
- 遺言書の有無の確認(もし見つかった場合は、家庭裁判所での「検認」というお手続きが必要になることがあります。ただし、公正証書遺言や、法務局で保管されていた自筆証書遺言は検認の必要がありません。)
【〜4ヶ月以内】
- 準確定申告
亡くなられた方の、その年の1月1日からお亡くなりになった日までの所得税の申告・納税です。(すべての方が必要なわけではありません)
【〜10ヶ月以内】 ★こちらも大切な期限です
- 相続税の申告・納付
相続税がかかる場合の最終期限です。
(大切なこと)
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった、税金のご負担が大きく軽減される特例を使うためには、原則として、この期限内に申告をすることが必要になります。
この日までに、ご相続人の皆様でのお話し合い(遺産分割協議)がまとまっていないと、これらの特例が使えず、税金のご負担が大きくなってしまう可能性がございます。
【10ヶ月以降〜】(法的な期限はありませんが…)
- 遺産分割協議
理想は10ヶ月以内にまとめることですが、法律上の期限はありません。 - 不動産の名義変更(相続登記)
【※とても大切なお知らせです】 2024年4月から義務化されました。
これまでは期限がありませんでしたが、法律が変わり、**「ご自身が相続人であることを知った日から3年以内」**に登記をしないと、10万円以下の過料(ペナルティ)が科される可能性が出てまいりました。
「実家だから」「誰も売ったりしないから」とそのままにしておくことは、これからは難しくなると考えておくと安心です。 - 預貯金、株式などの名義変更・解約
3. なぜ、スケジュール通りに進まないことがあるのでしょうか?
「10ヶ月もあるなら、十分間に合いそう」と、思われましたでしょうか。
行政書士として多くのお手伝いをさせていただいている経験から申しますと、この標準的なスケジュール通りにすべてが終わるケースは、実は「非常にスムーズに進んだ場合」に限られることが多いように感じます。
実際には、お手続きを放置されている方も珍しくありません。
スケジュールが大幅に遅れてしまう(=お手続きが難しくなる)一番の理由は、「調査」と「お話し合い」がすんなりとまとまるかどうか、という点にあるように思います。
理由①:相続人様の調査(「誰が」相続人か)
相続手続きの第一歩は、「どなたが法律上の相続人か」を戸籍で確定させることです。
- スムーズな場合:
相続人様が配偶者様とお子様のみで、皆様とすぐに連絡が取れる。 - お手伝いが必要になる場合:
- 故人様の戸籍を(お生まれになってからお亡くなりになるまで)すべて集めてみたら、ご家族も知らなかった相続人様(例えば、前妻のお子様や、認知されたお子様)がいらっしゃった。
- 相続人様の中に認知症の方がいらっしゃる。
- 相続人様の中に行方不明の方がいらっしゃる。
- 相続人様(例:故人のご兄弟)がすでにお亡くなりになっていて、そのお子様たち(甥御さん・姪御さん)が相続人になる(=代襲相続)。人数が10人を超えてしまうこともございます。
相続人様の調査は、遺産分割のお話し合いに「参加する方」を確定させる、とても大切な作業です。もし、お一人でも漏れがあると、後で行ったお話し合いがすべて無効になってしまうこともあり、専門家でも時間のかかる、非常に重要な調査のひとつです。
理由②:財産調査(「何を」分けるか)
次に、「何を遺産として分けるか」を確定させます。
- スムーズな場合:
財産がご自宅と、メインバンクの預貯金のみである。 - お手伝いが必要になる場合:
- 故人様がネット銀行やネット証券を複数利用されていた(通帳がなく、発見が遅れることがあります)。
- 遠隔地の山林や農地、共有名義の不動産など、価値の分かりにくい不動産がある。
- 故人様が**借金(負債)**を隠されていた。
特に「相続放棄」(3ヶ月以内)を判断するには、この財産調査がとても重要です。「プラスの財産」と「マイナスの財産(借金)」を正確に把握しなければ、正しい判断はできません。
理由③:遺産分割協議(「どう」分けるか)
相続手続きにおける一番の難関であり、スケジュールが遅れる最大の原因が、この「お話し合い」かもしれません。相続人様全員が、財産の分け方に「実印」でご同意いただく必要があります。
- スムーズな場合:
- 法的に有効な遺言書があり、皆様がその内容に納得されている。
- 法定相続分(法律で決まった割合)で分けることに、皆様がご同意されている。
- お手伝いが必要になる場合:
- 「実家(不動産)しかない」。不動産は、現金のように簡単に分けることが難しい財産です。
- 「私が親の介護を長年してきたのだから、多くもらいたい」(寄与分)
- 「長男だけ大学の費用を出してもらったのだから、その分は差し引くべきだ」(特別受益)
- こういった、ご家族それぞれの「想い」が入り、法律(法定相続分)と現実のお気持ちが、少しずれてしまう。
- 相続人様同士が疎遠であったり、仲があまり良くなかったりする。
ここで皆様のお話がまとまらない場合、家庭裁判所での「調停」や「審判」といったお手続きに進むこともございます。そうなりますと、解決までに1年〜数年という時間がかかることも覚悟しなくてはなりません。
4. スムーズな相続のために、私たちができること
スケジュールが遅れてしまうと、相続税の特例が使えなくなったり、相続登記の義務化で過料の対象になったりと、金銭的なご負担が増えてしまう可能性があります。
何より、ご相続人様同士の関係がこじれてしまい、精神的なご負担は何倍にも膨れ上がってしまうかもしれません。
私たち行政書士は、相続手続きの「交通整理」をさせていただく専門家です。

まとめ:ご不安を感じたら、まずはお話をお聞かせください
相続手続きは、「お片付け」と「財産の引き継ぎ」という2つが同時に進み、10ヶ月という大きな期限が設けられています。
しかし、そのスケジュールは、「相続人様の調査」「財産調査」「遺産分割協議」という3つのステップが、スムーズに進むかどうかにかかっています。
「うちは財産が少ないから大丈夫」
「家族仲が良いから揉めたりしない」
そう思っていても、お手続きの煩雑さや、予期せぬ事態などで、お手続きが止まってしまうケースを見てまいりました。
大切なのは、お一人で、あるいはご家族だけで抱え込まないことだと思います。
何から手をつければ良いかわからない時、スケジュール通りに進むかご不安を感じた時は、どうかお早めに、私たち相続の専門家である行政書士にご相談いただけないでしょうか。
円満な相続という「ゴール」に向けて、皆様のお気持ちに寄り添いながら、丁寧にお手伝いさせていただきます。まずはお話だけでも、お気軽にお聞かせください。

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(事務所情報)
行政書士 しらかば綜合事務所 代表行政書士 高田賢一
(行政書士登録番号 第18150062号 認定経営革新等支援機関ID 107520000214)
長野県行政書士会諏訪支部理事・支部IT部会長(任期~R9.5まで)
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